安全な地

今回の能登大地震で震源地に近いところでは多くの家屋が倒壊していた。
長周期地震で木造建築へのダメージが大きくなったこともあるが、もしも震源地が自分の住んでいる町だったら一体どうなっていただろうと考えると恐ろしい。
都心で今回のような震度7の地震が発生したらどうなっていたのだろうか。
木造建築でないものであっても、古い建物、建造物の崩壊は起きただろう。
そして、輪島市で起きたような火災が至る所で発生し、地震による直接的被害による死傷者よりも火災による死傷者が多くなるのは、阪神・淡路大震災で証明されている。
東日本大震災の時には、津波が町を襲い、それによる死者が圧倒的多数となったので、火災被害はあまり大きく取り上げられなかったが、コンビナート火災が発生したことは記憶に残っている。
避難所が圧倒的に足りないことも、わかった。
震度5強とはいえ、家屋倒壊までは見られなかった地元でも、元日の夜の避難所はとても希望者全てを受け入れるような状態では無かったらしい。
諦めて自宅に戻った人がほとんどだったようだが、電気、水道などのライフラインが止まっていたら、一体どうなっていたのか。
比較的地震の危険性が低い場所は日本列島にも存在している。
活断層から遠く、硬い岩盤層の上にある場所がそうだ。
昨年読んだ震災に関する小説で、津波被害を避けるために、津波が到達しない高台に居を移した住民が数年もすると、生活基盤となる漁港近くに移り住む話が書かれていた。
どんなに危険があると解っていても、リスクよりも普段の生活の快適さを人は優先するものだ。
もしも、絶対に地震被害がない場所があったとしても、そこが生活圏として快適でなければ人はけしてそこに居を移すことはない。
能登半島地震で大きな被害を受けた人達も大多数はそこで生活することを選択するだろう。
安全な地の価値が、現実的に降りかかる可能性のある災害リスクを超えることなど無いだろう。