IT人月商売

昔、IT土方という差別用語を使っていた。
これは、この業界における自分の立場を自虐的になぞらえた言葉ではあるのだけれど、この構造は日本に限ったものではなく、世界中どこでもそうなのだと思っていた。
古来から日本には口利き屋と呼ばれる商売があった。
人手が欲しい者は、口利き屋にこんな仕事にいつからいつまで何人差配してほしいと依頼する。
仕事をしたい者は口利き屋で自分にあった仕事を紹介してもらう。
おそらくは江戸時代から綿々と続く商売は様々な形で今も残っている。
良い言い方をすれば、労働力の流動化であり、経済活動において物々交換していたのを貨幣を介した流通にしたかのような革命であるとも言えなくもない。
小泉政権の時代に労働力の流動性が飛躍的に高まった。
所謂、非正規雇用の増大である。
非正規雇用者は、貨幣経済の小銭のように扱われ、様々なところで小銭を転がして中抜きする構造が出来上がってしまった。
人月商売を否定する人は世の中には一定数存在して、この業態から脱却しろと強く言う。
だが、小銭として扱われてきた人が今更紙幣としての価値を見出して貰える可能性は残念なことにゼロに近い。
IT業界でのAI活用が進むと、大多数のIT人材が不要になるという。
AIにより、将来なくなる職業というのは多く挙げられているが、IT業界でAI活用が進んだ場合、不要な人材の切り捨て速度は他の業界の比ではないだろう。
労働人口が激減する近未来。
どの産業に労働力を集約すべきなのか、世界やこの国は正しく判断できるだろうか。