富士通のホストで稼働していたオンプレミスのシステムをクラウドに移行した上で更新する案件を日本IBMが受注していて、実現性などの検討まで完了していた。
現行システムのEOLは2027年3月なので、現在だとベータ版による基幹処理フローの確認くらいは終わらせていたいところだが、納期に間に合わないとなり、NHKは日本IBMに対してすでに支払っている金の返還と損害賠償として56億あまりを求める訴えを起こした。
ベンダーである日本IBMはこれに対して真っ向から争う姿勢のようだ。
そもそも、受注するための見積は何を基準にはじき出したのか。
2020年8月に要件定義をアクセンチュアの協力を得て作成したとなっている。
おそらくは、この要件定義に基づいて見積が行われて、日本IBMが受注したのだろう。
これだけの情報ではこの訴訟が正当なものなのかが全く見えてこない。
システム移行なのだから、システム自体に求められる要件だけではなく、システムの移行に関しても要件が出されているべきなのだが、元々が1000万ステップを超えるシステムでCOBOLなども使っているようなので、ベースとなったシステムは1980年代位には稼働していた勘定系システムで、それに必要とされる機能をペタペタと張り付けて動かしたシステムだと言うことは容易に想像が付く。
日本IBMは元のシステムのコードを全て一新するつもりは無かったことは容易に想像できる。
ここまで大規模なシステムをコード解析して言語統一するとなると、一体何人月必要になるか、想像できない。
仮に人月見積もりができたとしても、開発に必要なスキルを持つマンパワーが確保できるわけがない。
COBOLをそのまま使うとしても、そのままで動くとは到底思えないので、結局レガシーシステムの解析ができる技術者を確保しなければいけない。
COBOLでバリバリ開発していたような技術者はすでに60歳を超えていて、しかも今でもバリバリコードを読めるかと言うと、絶望的だろう。
つまり、このシステム移行を成功させるにはかなりの無理ゲーをクリアしなければいけなくて、リソース確保の為に現在のソフトウェアエンジニアの人月の数倍の資金が必要だということは分かるはずだ。
このシステムが幾らで発注されたのかは知らないが、入札した側は想像していた倍以上の開発費をかけて、保守費用で超過分を回収するビジネスモデルしかありえないだろう。
だが、ここで保守費用に大きな落とし穴がある。
NHKはシステムをクラウドに移行するというのたから、何もなければ丸儲けとなるハード保守費が日本IBMには入ってこない。
この規模であってもソフトウェア保守のみだと、年間1億程度の保守費用請求が関の山。
数十億を回収するとなると、とっくにシステムのEOLを迎えてしまうかも。